熊本城地震【サムライの英知】その技術を再建に活かすことはできないのか

僕が日本で一番好きな城は熊本城だ。
慶長6年【1601】に築城の名手加藤清正が工事に着手し慶長12年【1607】頃には完成した。
姫路城、大阪城と共に日本3大名城の一つであるこの城は、面積98万m2、周囲5、3㎞大小天守のほか櫓49、櫓門18、城門29を構えた。その後寛永9年【1632】の加藤家改易により明治維新まで細川氏が代々城主を務めた。明治10年の【1877】の西南戦争で西郷軍の攻撃を受ける前日に新政府軍が、城に火を放ち大半の建物は焼失した。
2016年4熊本地震が起き熊本城も大きな被害が出た。戦後最大規模の文化財被害。NHKが4Kのドローンを使って撮影した映像を3000時間以上かけて解析デジタル空間に熊本城を完全再現した。
貴重な文化財に大きな被害が出た。これは被害状況の一部の写真だ。

広範囲に渡って石垣が崩落して櫓が崩れ落ちてきている。
しかしここで一つ疑問が残る。加藤家2代目加藤忠広やその後の細川氏の時代に築かれた石垣に崩落が目立ったが築城当初に築かれた石垣の実に9割が地震に耐えていたのだ。なぜ古い時代の石垣に高い耐震性があったのか。そこには現代の研究者達も驚く計算式が隠されていた。       
           y=【a/h2{loge x/h2-1}b/h0】x+a

これは熊本城の石垣の反り方を示した計算式だ。これは清正流石垣【せいしょうりゅういしがき】と呼ばれている。計算式だけ見てもよくわからないと思うので清正流石垣と慶長期頃の石垣の積み方の違いについてわかりやすく説明する。
まず慶長期頃の石垣の積み方の特徴としては主に石垣の角に使う石が他の石垣と比べ大きい。これは石同士の接する面積を大きくして安定させ崩れにくくさせる方法だ。今日本に現存している城のほとんどがこの積み方であると言える。しかしこの積み方では、力学的に言うと地震が起きた時、力は横に働く。そうなると端にある石垣が押し出され中の方にある石垣に働く力が緩み中側に積んである石垣が崩れる。今回の熊本地震で熊本城にはこの典型的とも言える事例がいくつもあった。端の石だけが残り、中側にある石が崩落している。


奇跡の一本足として有名な飯田丸五階櫓だが考え方では必然とも言える。崩れる寸前だったが大林組というところが櫓が崩れないように大規模な工事を行っている。


一方清正流石垣ではどうだろうか。清正流石垣の特徴としては端の石垣が他の石とあまり大きさが変わらない。これを力学的に見ると力は下に向かってかかる。下に力がかかっても力を地面に向かって逃がすことができる。そうすることで石垣が緩むのを抑える事ができる。だから清正が作った、ほとんどの石垣は崩れなかった。
これは唯一熊本城で現存している五階櫓である宇土櫓だ。普通の城では天守閣にもなれるほどの巨大な櫓で第三の天守とも呼ばれていた宇土櫓だ。熊本地震で付け櫓が倒壊したのは残念だが櫓本体は無事だった。石垣は少しも崩れなかった。


今回の熊本地震で熊本城は大きな被害を受けニュースなどでも報道され、石垣の積み方なども見直され始めているが、僕はニュースの生中継を見ていてこれは初めてではないことを思い出した。


この城は福島県白河市の白河小峰城だ。奥州の関門と呼ばれ日本100名城にも入っている、戊辰戦争の舞台ともなった。この城は2011年に東日本大震災に襲われた。写真をよく見るとわかると思うが、慶長期の端の石が大きい積み方をしている。地震の後この城にも熊本城と同じ現象が起きた。


熊本城より規模が小さいが起きている現象は同じだ。では熊本城の復旧作業では全て清正と同じやり方で積み直せば良いのではないか。しかしそれはできない。なぜなら石垣の石の一つ一つも重要な文化財。全ての石に番号をつけ震災前の写真と見比べながら積み直していかないといけない。気の遠くなるような作業で震災前の状態に戻すのに30年ほどは
かかるのではないかとも言われている。だが、また元の積み方で積み直してもまた今回のような地震が来た場合また同じようなかことが起きることが予想される。また今日本に残っている多くの城が、慶長期の石垣の積み方をしており、別の地域で地震が起きれば熊本城の二の舞になる可能性も否定はできない。だから、文化財をそのままにでも、災害にも耐えれるように工夫してほしい。
また、僕は熊本城に10000円を募金した。城に興味があるのならば少しでも募金してほしい。再建するにはやはり膨大なお金が必要で国と熊本市だけの費用だけではまかないきれない。城は日本の貴重な文化財なので未来に残せられるように考えなければいけないと思う。

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